レジデンシー 東京

基幹施設:久地診療所(神奈川県川崎市) プログラムの期間:4年間

日本医療福祉生活協同組合連合会・家庭医療学開発センター(CFMD: Centre for Family Medicine Development)は、CFMD家庭医療/総合診療レジデンシー・東京(以下、本プログラム)を運営しています。

総合診療/家庭医療のリーダーを養成するというミッションをこれまで以上に掲げました。

首都圏3年、医療資源不足地域1年(宮城県塩竈市の坂総合病院、沖縄県の宮古病院のご協力を頂きました)の4年プログラムといたしました。また、CFMD東京の強みの一つであるリサーチやその他Non-Clinical Skillsの修得も重視しております。

レジデンシーの特色

医療生協は、地域に根ざした医療・福祉・介護施設を複数有しており、小児から高齢者まで幅広い年齢・階層を対象とした包括的な健康サービスを提供しています。本プログラムは大都市の教育診療所を基盤としており、大都市圏の大きな特徴でもある、地域における健康格差の拡大、患者層や疾患の多様性、今後予想されている高齢者人口の爆発的増加に対応できる総合診療専門医を養成することを目指しています。また、これまでの実績から指導医陣が豊富であり、総合診療のロールモデルと出会い研修を積むことができる研修体制を整備しています。また、診療所における研修の期間も長く、都市部の個性豊かな診療所での経験を積むことができます。

本プログラムの前身となるCFMD家庭医療学レジデンシー・東京では、2006年より総合診療領域の専攻医相当の医師として家庭医療専門医の教育にとりくみ、これまでに合計28人の家庭医療専門医を誕生させてきました。過去のプログラム修了者の半数にあたる14名は女性であり、妊娠中の研修内容の軽減等柔軟な対応を行っています。

プログラムの特徴

  1. Horizontal Curriculum地域に貢献できる家庭医となる観点から以下の内容を 4年間のプログラムを通じて一貫し実施する。
    • 診療所における継続外来(2年間のone -day-backと 2年間の診療所固定)
    • レジデント・デイ (月1回 1か月の振り返とClinical Jazz、診療のビデオレュー、CbD)
    • レジデント・セミナー (月1回 家庭医療/総合医療のコアとなる領域集中セミナー)
    • プロジェクト・ワーク (学会発表、診療所での QI )
  2. 地域中小病院研修地域内医療・福祉との多施設連携による外来・入院医療を経験することができる。外来の虚弱高齢者ケアをはじめ、在宅ケア導入・緩和ケアについても充分な症例を経験できる。
  3. 救急研修年間2万件を超えるウォーク・インER研修を通じ、多彩な事例を担当することで、急性疾患のスキルとマネジメント能力を獲得する。
  4. 小児研修地域密着型の小児外来・入院医療を通じ、検査の要否や緊急性判断、入院の要否の判断、入院時に必要な初期対応を学ぶ。また、診療所外来を含めワクチンに関する知識、感染症の対応など学校や園での疾患管理についても学ぶことができる。
  5. 指導体制に関する特長
    • 4年間教育診療所所属
      所属は教育診療所とする。ローテート研修中であっても後期研修の拠点は1か所の教育診療所とし、継続的外来を保証し、所属先の指導医が現地での指導にあたる。
    • プログラムの管理
      プログラム管理はCFMDが行い、運営委員会を指導医で構成することにより、複数法人にまたがった診療所基盤型の専門研修を可能にしている。これにより、総合診療医としてのアイデンティティを常に保証することができる。
    • 多彩な外部ファカルティー
      外部のアドバイザーとのネットワークから、臨床疫学・生物統計学、EBM、医学教育、医療政策、医療経済、プライマリ・ケア研究のスペシャリストにファカルティーを依頼し、より質の高い研修を可能にしている。
    • ITE(In-training examination)
      総合診療専門医に必要な知識レベルの確認のため、年1回のITE(In-training examination)を実施している。

ローテーション(例)

1年目 地域研修病院における総合内科研修・内科研修
所属診療所へのワンデイバック(外来・往診)
2年目 小児科研修 緩和ケア 救急医療 etc
所属診療所へのワンデイ・バック(外来・往診)
3年目 僻地・被災地における総合内科・内科研修
沖縄県立宮古病院or宮城厚生協会 坂総合病院
4年目 教育診療所での外来・往診
通年エレクティブ(整形外科、皮膚科、ウィメンズヘルスなど)

ポートフォリオ(経験省察研修録)

日本家庭医療学会に準拠した研修目標に、当プログラム独自の研修目標を勘案し、下記のエントリーにより構築されたポートフォリオによる総括評価を行っています。

家庭医の特徴 1. 生物心理社会モデルと患者中心の医療
2. 家族志向性ケア
3. 地域指向性ケア
4. 予防医学・健康増進
家庭医の独自性 5. ケアの継続性 理論的考察も含めて、事例を提示。事例をもとに理論を提示する
6. 病診連携とコーディネイト 社会資源の利用、地域リソースのネットワーク化ができる
7. 診療の構造 患者中心の医療を診療モデルとして、理解し応用できる
スタンダードな診療所外来診療 8. 糖尿病 プロセスレベルで行えていることを示す。Clinical indicatorを意識して
9. 認知症 診療のプロジェクト、質向上の取り組み
10. 慢性疾患1 DM、HT、HL、喫煙、アルコール、骨粗鬆症、BPH、喘息(COPD)、不眠、うつ、NUD、肝炎など
11. 慢性疾患2 慢性疾患に関する事例報告。困難な事例を提示
家族志向の小児保健活動 12. 乳児健診 ケースログと印象に残った例
13. 予防接種 ケースログと印象に残った例
14. 一般的疾患と紹介 コモン・ディジーズと病院/小児科専門医に紹介した事例
ハイレベルな在宅診療・高齢者ケア 15. 在宅緩和ケア Bad news tellingができる、意思決定のサポートができる
16. 在宅急性期ケア 困難事例。入院せずに、在宅でケアした事例
17. 在宅ケア導入とケースマネージメント 在宅ケアの導入を行った事例
18. 外来の虚弱高齢者ケア ケース発見(認知症など)の事例、包括的老年医学的評価を行える
リーダーシップ 19. チーム・ビルディング チームをまとめるために努力した事例
20. 指導医・教育者 印象に残った指導事例、地域基盤型医学教育の理解
21. 医療生協運動 医療生協運動に関する経験事例
診療の質管理・向上と生涯学習 22. プロジェクト・ワーク 3年目でリサーチをやる。研究計画書を作成し、実施発表する
23. 自己決定型学習とEBM 臨床上の問題の解決をEBMでアプローチした事例
24. SEA significant event analysisミス、失敗等に関して、診療所スタッフ全体での振り返り